POP演劇祭は今回が第1回ですが、どのような演劇祭ですか?
福島市の福島演劇鑑賞会の10代、20代のメンバーを中心に結成した演劇活動団体「POP」による演劇祭です。学生や若手社会人による福島市の三劇団が公演を行います。「昨日より人を好きになった」をキャッチフレーズに、演劇を通して人と人との輪を広げること、福島の演劇文化・文化振興を目標に行っています。
どのような経緯で今回の演劇祭の企画が出来たのでしょうか?
元々は「福島演劇鑑賞会」を若い人たちに知ってもらうきっかけとして、企画しました。
POPメンバーの多くは鑑賞会員で、文学座さんや青年座さんといったプロのお芝居を福島市で見させていただくのですが、劇場内にとにかく若い人が少ないのです。鑑賞会若手は50代からという、客席の世界にも演劇界の常識を持ち込んでしまっているという状況です。ただ、言うまでもないことですが、福島に旅公演に来ていただける劇団の作品が若い人が楽しめないわけでは決してありません。むしろ老若男女が劇場という同じ空間で一緒に泣き、笑い出来る、本当に素敵な作品です。
でも、なんとなく鑑賞会は「ご年配向け」というイメージがあったりして。このイメージを払拭して、若い人たちにもっともっと鑑賞会を身近なものに思って頂くきっかけにしたい。また、それだけではなく、福島の各劇団の刺激や学びになり、福島の演劇文化の向上に繋がればと思いが込められています。
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なるほど。若い世代に演劇を広めたいという思いは私たちの運営する演劇365ドットコムにも通じるところもあり、非常に共感できます。私たちがしていることが、若い世代の人の演劇にふれあうきっかけになればいいですよね。
今回のPOP演劇祭には、どんな劇団が参加するのですか?
市内を中心に活動する3劇団が参加します。
まずは、福島県立医大演劇部の「劇団 瞬」。将来は、医療関係に就く学生による劇団です。医療は、いかに人の心に寄り添えるかが大切になってきます。瞬は「その一瞬を切り取る」をキャッチフレーズに、演劇を通してたくさんの人々の心に触れ、考え、未来に活かしていこうと活動しています。
2つ目は、福島市で活動する「劇団 120◯EN」。「福島に住む人々のルーツを辿る演劇集団」として、福島の民話や歴史を取り入れたオリジナル作品を上演しています。東日本大震災を舞台公演本番中に被災した福島大学演劇研究会メンバーを中心に直後の4月に旗揚げし活動を続けています。
「劇団 少女標本」は1月に結成されたばかりの劇団です。劇作家の柳美里さんの「静物画」に惹かれ、この舞台を上演するために、福島大学を中心に、秋田、山形、新潟、宮城など各地の大学生と、福島南高校演劇部の生徒が集まり練習を重ねています。
今回の演劇祭で伝えたいことはありますか?
「昨日より人を好きになった」をキャッチフレーズにしています。演劇の魅力のひとつに、客席に一体感があると思います。劇場の中には、それまで顔を合わせたことのない、年齢や性別、もしかしたら国籍も違う人が集まります。今まで全く縁の無かった人たちが、同じ空間の中で、一緒に泣き、笑いする。そんな大きなことじゃなくても、例えば喧嘩してたカップルが、一緒に心を動かすことができたら、きっとすぐに仲直りしちゃうんじゃないかと思うんです。熟年離婚の危機のご夫婦が一緒に良い演劇を見たら、日本の危機は脱却されると思うんです。
人を好きになるというのはいろんな形があると思うのですが、いろんな人の気持ちを認めてあげたり、それも含めて受け入れてあげたり。見た前の日よりも、なんとなく人っていいなって、演劇祭の作品を通してお客さんが一体となることで思っていただければと考えています。
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最後に今回の演劇祭にかける意気込みをお願いします。
開催地は福島市。「震災」「原発」が話題になりやすい街で、演劇作品もどうしてもそういった作品が求められがちになっているように感じます。ですが、今回の演劇祭に震災ものを期待されても残念ながらお届けは出来ません。
ただ、この演劇祭が震災があったからこそ出来たというのも確かだと思います。「昨日より人を好きになった」。僕らは、3.11が起こったことで、まさにこのことを実感したのかもしれません。
そんな僕らの想いに時間を預けて、客席からぜひ一緒に演劇祭を作りあげてください。ご来場心よりお待ちしております!
演劇祭のご成功を心よりお祈りしています。今回はご多忙の中、ありがとうございました。
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